井野中に上記創作劇の脚本をお借りに伺った際、もう一冊、研究会で発表された資料も添えて下さった。
テーマ「地域の音楽」教材化の試み
〜お囃子づくりを通して〜
先生は、現在の中学音楽指導要領に疑問を抱かれている。例えば、筝曲の教材に関して、聞くだけではなく触れてみることを重要視され、歌唱指導曲“荒城の月”は、現代の子どもにはイメージの湧かない曲だと指摘されている。そこで、地域の音楽であるお囃子を授業に自ら導入された。このことは、日本の音楽の良さを充分に知り尽くされているからこそ、指導の仕方の重要性を説いておられるのだと思う。その実践例を読んでいると、まるで自分自身が先生の授業を受けているかのごとく引き込まれていく。佐倉お囃子保存会の方々を招き、生の指導を受けるというアイディアも盛り込まれ、会の方々と接する上での礼儀についても細かく指導されている。面白いのは、「歌舞伎ロックス」で、バチを握りご自身のスゴ腕を披露。また、バカノリで生徒もあきれる先生を演じられたりもする。具体的な指導方法としては、クラス40名を6班に分け、1班ごとに祭りをイメージしたテーマを設け、それに基づいてお囃子の音を楽器を使って生徒自身で構成していくというものであった。
数時間掛かりで資料を読み終え思ったことは、音楽教育というと直ぐピアノを習わせたりするが、子供のころは、リズム楽器の面白さを身体で味あわせてやるほうがより楽しさが感じられるのではないだろうか。それもありきたりのものではなく、今回のようにお囃子に用いられる民族楽器等であれば、それに触れることによって日本の昔や他国のことに思いを馳せ、その楽器や音楽に関わってきた人々への敬意や優しさも生まれてくるのかもしれない。幸福は常に足元に転がっているとも言われるが、それは自ら生活する地域をいろんな角度から見つめ直すことにより発見できるものなのかもしれない。
そういえば、小長井先生がおっしゃっていた言葉がある。「2002年の指導要領を先にやってしまったのかもしれません。」